Active Safety
─ 「万が一」を起こさないための性能 ─

軽量化による安全性の向上

ライダーが実感するヘルメットの重さには、実重量、着用時の感覚的重量、空気抵抗や慣性モーメントが加わった動的な重量という3つの要素があります。
特にヘルメットの実重量は、頚椎に負担を掛けると共にアクシデント時の慣性モーメントに直結します。軽量化を図ることは事故の影響を軽減することにつながり、さらに走行中の慣性モーメントも減少するので、長時間着用による疲労の軽減にも効果的と考えられます。
SHOEIではヘルメットの軽量・コンパクト化や重量配分の研究を進め、低重心かつ適切な重量バランス、内装のホールド性能との相乗効果により、ライダーの疲労を抑えて集中力を高めるヘルメットを追求しています。

【各素材の比重】
ガラス繊維:2.6 / カーボン繊維:1.8 / アラミド繊維:1.3 /有機繊維:0.9 / 高性能有機繊維:0.9 /樹脂:1.0

シェルの軽量化技術

ヘルメットの構成パーツの中で最も重いのがシェルで、全体の重量を抑えるにはこの軽量化が必要不可欠です。しかし、シェルはアクシデントの衝撃を受け止め分散する最も重要な部分の一つであり、簡単に軽量化することは困難です。
SHOEIでは長年培ってきたFRP成形の技術を活かし、強度と軽さを両立したシェル構造、AIMおよびAIM+を確立。AIMは「Advanced Integrated Matrix」の頭文字で、(1)積層成形方法、(2)ラミネート素材、(3)樹脂の分子構造という3点で非常に優れた特長を備えています。その結果、軽量で高剛性でありながら大きな衝撃に対しては適度な弾性を発揮するという、衝撃吸収に理想的な性能を実現しています。

SHOEI独自のシェル構造、AIM/AIM+

新しい素材を貪欲に研究し、良いものは積極的に取り入れるのがSHOEIの考え方です。しかし、優れた特徴を持つ素材でも加工方法によって、性能に大きな違いを生むこともあり、素材の性能のみならず、「料理方法」にもSHOEIでは多くのノウハウを蓄積してきました。
また、それらの素晴らしい素材や加工技術に加え、現実的に多くのお客様が購入できる価格であることもSHOEIが重視している大切な要素です。性能のみならず、お客様にとって価値ある製品であるための要素を兼ね備えたシェル構造が、SHOEI独自のAIMおよびAIM+なのです。

AIM/AIM+の特長

(1)積層成形
AIMの特徴の1つは、その予備成形工程にあります。一般的にFRPはガラス繊維などの素材を組み合わせ、熱硬化性樹脂を含浸、硬化させて成形することによって強度を得ます。しかし、組み合わせる素材の量や性質、位置、相性などによりその性質は大きく変化します。SHOEIは予め3次元形状とした有機繊維製の構造体を積層の中心に配置することにより、理想的なシェルの成形を可能にしました。一般的なFRPに比べ、素材同士の無駄な重なりや樹脂素材の流動が少なく、高強度で軽量なシェルを実現しています。

(2)ラミネート構造

AIM
AIMはガラス繊維と複数の有機繊維との積層により構成されています。さまざまな性質を持つ複数の素材を最適な位置と順番で積層し、その比重の軽さを活かしながら丈夫なガラス繊維と組み合わせてシェルを成形。ガラス繊維のみのシェルに比べて格段に高強度で軽量かつしなやかな性能を備えてます。

AIM+
AIM+はAIM構造をベースとし、さらに比重が軽く弾性に優れた高性能有機繊維(高強力高弾性率繊維)を最適な位置にプラスして積層。より軽量で剛性と弾性に優れたシェル構造になっています。

(3)樹脂の分子構造
AIMおよびAIM+には熱硬化性樹脂の一種である特殊不飽和ポリエステル樹脂(Special Modified Unsaturated Polyester Resin)を採用しています。この樹脂は熱硬化することで、分子同士が複雑に絡み合った3次元的分子構造に変化。これにより強度と柔軟性という相反する性能を満たし、耐蝕性の面でも優れた性質を実現しています。

AIM

AIM+

進化する衝撃吸収ライナー

シェルと一体化して機能する衝撃吸収ライナーの素材は、優れた衝撃吸収性能とともに軽量であることが要求されます。この点では発泡スチロールが現時点でベストだと考えられますが、SHOEIはこの分野でも常に技術開発を続けています。構造や体積、密度という要素に加え、異なった密度の組み合わせや多段発泡技術などを応用しながら常に進化を目指しています。

例えば、快適性を向上させるベンチレーションシステムを効率的に機能させるためには衝撃吸収ライナー内部にエアルートを設けなくてはなりません。この場合、衝撃を吸収する部材の体積が減ることになり、安全性を担保するためには高度な設計・製造技術が必要となります。SHOEIでは、既に確立している技術である2層構造のデュアルライナーなどに加えて多段発泡などの新技術を取り入れ、高度な安全性を確保しています。

また、M.E.D.S.(Motion Energy Distribution System)もその1つと言えるでしょう。特にオフロード競技の分野において、最近は転倒時の回転衝撃に注目が集まっています。柔らかく滑りの少ない土の上で転倒した場合、ヘルメットと一体化した頭部が回転運動し、脳幹に軸索損傷を負う可能性があると指摘され始めているのです。
回転加速度については現時点で各安全規格に定められておらず、その計測方法も発展途上といえます。SHOEIではあらゆる可能性を考慮した独自の回転衝撃に対する検証方法を元に、M.E.D.S.を開発。単にヘルメット内で頭部が滑ることではなく、2層構造の衝撃吸収ライナーが動くことで回転衝撃を吸収、さらにアクシデントの際はライダーの頭部がヘルメット内により深く入り込む構造とすることで、基本的な安全性能を損なうことなく回転衝撃を吸収することに成功しています。

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