Active Safety
─ 「万が一」を起こさないための性能 ─
フィット感とホールド性を両立した内装構造
SHOEIでは開発段階から「フィット感」と「ホールド性」という2つの言葉を区別しています。フィット感は主に肌触りや心地よさ、頭部への密着性を意味し、Fit in Shop(店頭で試着したときの感触)と表現することができます。一方ホールド性は、走行した際にどれだけヘルメットが安定して頭部を保持しているかを意味し、こちらはFit on Riding(走行した際の感触)と表現できるでしょう。
これらは混同されることも多かったため、かつての一般的なヘルメットはぶ厚いウレタンを利用してフィット感を演出していました。しかし、それは同時にホールド性もウレタンの反発力に頼ることを意味し、高速走行時のブレや内装のへたりを誘発していたのです。
SHOEIでは、人間の頭の形に近づけるべく衝撃吸収ライナーの内面形状から見直し、さらに硬さの異なるウレタンの複合積層や3次元加工を用いた複雑な曲面カットによって従来よりも厚みを抑えたウレタンパッドの開発に成功。心地よいフィット感はそのままに、高速走行でもブレの少ない確かなホールド性を実現しています。
高いフィット感とホールド性を実現するため、細分化された多くのパーツ群で構成された内装。眼鏡使用やメンテナンスにも配慮した構造
ウレタンとライナーの進化
また、頭の形には前後に長かったり横幅が広かったりなど個人差があります。SHOEIでは2011年からスタートしたP.F.S.(パーソナルフィッティングシステム)のデータ蓄積により、従来のオプション内装による全体的な厚み調整だけでは対応しきれない場合があることが分かってきました。この問題を解決するためにSHOEIではパッドをさらに細分化、各部の厚みを変えられる次世代の内装を開発。これにより、ユーザー自身が内装を細かく調整する余地が広がりました。
P.F.S.(パーソナルフィッティングシステム)
正しいサイズを知り、理想のフィット感とホールド性を実現
ヘルメット選びの目安となる「鉢周り」の「58cm」や「59cm」というサイズ表記は、帽子のように柔軟で上から見たときの縦横比率が自在に変化する場合は良いのですが、パッドの厚み分しか変形しないヘルメットの場合、それのみを参考にしてサイズを決めてしまうと必ずしも正確とは言えない場合もあります。
また、頭部の形状は同じ人種であっても想像以上に個人差が大きいのです。一般的には長時間着用して頭が痛くなければサイズが合っていると判断しますが、より良いフィット感とホールド性を追求するのであれば、頭部のサイズや形状を正確に把握し、それに基づきフィッティングされたヘルメットがベストであると考えられます。
一般的なヘルメットのフィッティング調整は、ヘルメットを被った際の感覚をもとにパッドを加減して行っていましたが、P.F.S.では専門スタッフが頭部を正確に計測しプログラムに入力することで、ヘルメット内面と頭部の形状を比較し、最適なヘルメットサイズを割り出します。これを基にヘルメット内面と頭部との隙間を数値化する事で隙間が広ければそれを埋めるためのパッドの種類や枚数を表示し、被り心地を最適化させることが可能となりました。
鉢周り計測例
頭部計測例
各種パッド調整例
SHOEIではP.F.S.を含めた総合会員サイト「my SHOEI」を設置しています。会員登録後、お客様のマイページに所有ヘルメットやP.F.S.のサイズ診断結果、内装調整結果が保存でき、次回のヘルメットご購入時にはそのデータをもとにスピーディなサイズ選択とフィッティングが可能となっています。
進化する内装生地
吸湿速乾性に優れる新素材と肌触りのいい起毛素材を適材適所で配置
最新のSHOEIヘルメットでは、内装に吸湿・速乾性能に優れる新素材を使用するモデルが主流となり、ヘルメット内の全体的な快適性は大きく向上しています。一方、着脱のしやすさやホールド性などを考慮して、内装各部の起毛の方向性を検討するなど細部にも配慮。プレミアムヘルメットにふさわしい被り心地の良さは、高機能な素材ときめ細やかな設計の積み重ねによって実現しているのです。
救護に貢献するE.Q.R.S.
アクシデントに遭遇した場合、救護者がライダーのフルフェイスヘルメットを取り外す作業は想像以上に困難です。SHOEIが開発したエマージェンシークイックリリースシステム E.Q.R.S.(Emergency Quick Release System)は、救命救急医との研究によりチークパッドを外部から引き抜くことでヘルメット開口部を広げ、頚部への負担を最小限に抑えつつ容易にヘルメットを取り外すことを可能としたシステムです。
緊急時の救護作業をサポートするE.Q.R.S.。専用リボンを引くだけの簡単操作で、 容易にヘルメットを取り外すことが可能
視界を広げる内装
SHOEIのフラッグシップモデルX-Fourteenに採用された内装は、多くのMotoGPライダーの意見を参考に開発したもの。彼らのコーナリングはバンク角が深く、ライディングフォームもアグレッシブであるため、低い頭の位置からコーナーの出口を見なくてはなりません。そのため、内装の位置を調節することでヘルメットの被り角度を約4度上げ、より広い上方視界が得られるようになっているのです。
チークパッドとセンターパッドの装着位置を変更し、ヘルメットの被り角度を調整することで上方視界が確保できる内装構造